射出瞳とは

顕微鏡を覗くと対象物の「像」が見えますが、この「像が見えるポイント」を射出瞳(読み:しゃしゅつひとみ、しゃしゅつどう)と呼びます。そしてこの射出瞳には「径」があります。一般的な顕微鏡の場合、射出瞳は数ミリと小さいため、像が見えるポイントに自分の目をぴたりと合わせる必要があり、必然的に接眼レンズを覗き込むような姿勢をとることになります。しかしながら、ある調査によれば、顕微鏡を使う作業者の94%が、何らかの視覚障害、または頭痛やドライアイなどの目の不快感と組み合わせた不調を抱えていることが分かっています。このような負担をかけずに顕微鏡を使った検査などの作業を行うためには、この射出瞳を大きくし、前傾しなくても、また多少頭の位置が動いても像を見やすい状態を作ることが求められます。

ヴィジョン・エンジニアリングの射出瞳拡大技術

当社独自の射出瞳拡大テクノロジーは、従来の双眼顕微鏡よりはるかに大きい、最大35ミリまで射出瞳(イメージ図の赤い円)を拡大させます。この技術により、眼と接眼レンズの細かな調整が不要となり、長時間前傾姿勢を保つことで生じる目・首・肩・腰の筋肉の緊張や疲労感の緩和に繋がります。

Comparison of exit pupil size between binocular and eyepiece-less viewing

射出瞳拡大による作業者のメリット

自然な姿勢での観察

射出瞳の径が拡大されるため、前傾して顕微鏡本体に目を近づける必要がなく、自然な状態に頭を保持したまま観察が可能です。拡大像は下方ではなく正面のビューイングヘッドに映し出され、少し頭を動かすだけで観察対象物の目視も可能です。普段メガネや保護ゴーグルを使用している場合でも、観察の妨げになりません。

眼精疲労の低減

従来の双眼顕微鏡では、鋭く強い光が目に直接入射し、瞳孔が常に収縮することで目の疲れが生じていましたが、射出瞳の拡大により、ビューイングヘッドから離れた位置で周囲の室内光などを取り入れながら観察ができます。瞳孔の収縮を抑制するため、目の負担も軽減されます。

集中力と生産性の向上

従来の顕微鏡の接眼レンズを覗くと、飛蚊症のような黒い点や糸くずが視界に現れやすく、集中の妨げとなっていましたが、当社のアイピースレス光学系はこの問題を解消し、長時間の集中観察を可能にします。また、高品質なイメージと深い被写界深度により、観察対象がより鮮明に見えます。頭の位置の自由度が高まることで疲労感が減少するため、一度の作業で多くの対象を正確に検査できます。

衛生面への配慮

従来の顕微鏡のように、直接接眼レンズに肌が触れることがありません。そのため、新型コロナウィルスなどの感染防止にも寄与するだけでなく、厳格な衛生環境の管理が求められるエレクトロニクスやライフサイエンスなどの分野にも安心してご利用いただけます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 射出瞳拡大技術のメリットは何ですか?

A. 目や首・肩・腰の負担を軽減し、快適な姿勢で長時間作業できる点が最大のメリットです。また、集中力の維持、観察効率や生産性の向上に繋がります。接眼レンズに直接肌が触れないため、衛生面でのメリットも高いと言えます。

Q2. アイピースレス光学系とは何ですか?

A. 接眼レンズ(アイピース)を使用せず、作業者が顕微鏡から目・頭を離した自然な姿勢で対象物を観察することができる光学システムです。これにより、従来の顕微鏡で発生しやすい疲労や集中力の低下を防ぐことが可能です。健康経営に対する意識が高まる中、従業員の満足度向上や離職防止にも貢献します。

Q3. どのような現場で役立ちますか?

A. 精密検査や長時間の観察作業が必要な製造現場、研究機関などで特に有効です。例えば、電子機器の製造におけるプリント基板、メッキスルーホール、コンポーネント、はんだマスク、はんだ接合部の検査や測定に最適です。その他にも、医療機器の製造、細胞/バイオサイエンスの研究、精密エンジニアリング、焼結前または焼結後の金型ツール、成形部品、3D印刷物、ジュエリー、時計製造などの現場に適しています。

参考文献等